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素敵企画R★K12ケ月計画様に投稿した拍手作品。
新作の代わりと言ってはなんですがこちらでもUPしてみることにしてみました。
糖度50%増(当ブログ比)になっておりますが・・・・・・。

それでは続きからどうぞ。
COUNT DOWN


12月28日 11:30pm

「キョーコちゃん、お正月は里に帰らないのかい?」

だるま家の閉店後、お茶を啜りながらおかみさんが言った。 

「ええ。こっちにいます。」
「まさかドラマの仕事でお正月もないとか・?」
「あ、いえ年末年始は収録はお休みなんです。新しいドラマのほうもクランクインは年明けなので・・」

ダークムーンは 年末年始は2週分放送が休みになる。穴埋めに年末年始ならではの特番が入るため、
収録も休みになるのだ。この業界は普段が休めない分、年末年始はなるべく休もうとする傾向があるらしい。

「去年は?帰ったのかい?だめだよ正月くらいは顔みせてやんないと・・ずっと帰ってないんだろう?」

もちろん、上京してからは、京都には全く帰っていない。帰る場所なんてないに等しいし。

・・去年の年末は 一人で紅白見てたっけ・・・
デビュー早々紅白出場が決まったショータローをテレビで見て。
遅くまで待ってたけど、あいつは打ち上げだとかで結局朝まで帰ってこなかったな・・。
そんなことを思いだして、黙ったままの私に、おかみさんは言った。

「じゃあお正月は、あたしらの田舎に一緒に来るかい?あたしらも3日には帰ってくるよ、仕込みがあるからね」
「あ・・・・ありがとうございます。でも初詣に行く約束、モー子さんとしちゃったんで」


本当は嘘。約束は2日にデパートの初売りに行くだけ。
モー子さんには、おかみさんたちと過ごすからって伝えてある。
お正月は家族水入らずが一番だもの、邪魔しちゃ悪いわよね。


12月30日 1:00pm 

29日までお店を開けていた大将とおかみさんは、翌日おかみさんの郷里へと旅立っていった。

私は、というと、部屋の大掃除。
誕生日にいただいたお花の水も換えて。
ふと目にとまる、壁に張られた敦賀さんのポスター。
ほんの数カ月前までは、あんなに嫌いだった人のことを今はすごーく尊敬してるなんて。
人生わからないものよね・・・なんて、この一年のことを思い出しながら。

「敦賀さん・・どうしてるかなあ・・・・」 いつのまにかそんなことをつぶやいていた。


12月31日 11:15am

そうして迎えた大晦日。

・・今年は何をしてすごそう・・あいつが出てる紅白なんてもう見たくもないし
かといってバラエティとか見る気もしないし・・・。プライド・・・興味ないしなあ・・・
映画でも観に行こうかしら・・・そんなことを考えてなんとなく身支度していると。

RRRR・・・・

携帯が鳴った。・・・・非通知・・?なんだろ急な仕事?それとも・・・・
軽く深呼吸して、通話ボタンを押した。

「はい、もしもし、最上です・・」
「もしもし、俺だけど。 今電話大丈夫?」

久しぶりに聞いたその声に、鼓動が跳ねあがる。

「・・!!敦賀さんっ はい、大丈夫です!」
「・・今日さ、時間ある・・・・?」
「え・・?はい・・ありますけど・・あの敦賀さんは?」
「今年は仕事オフでね。家にいても体を鍛えるかDVD見るくらいしかやることなくて。
 最上さん、京都には帰らないんだろう?だったら一緒にカウントダウンでもやらないかと思って」
「は、はい!!」
「じゃあ、9時に下宿先に迎えに行くよ」 
「わかりました!9時ですねっ!」  

 新年を迎える瞬間を、今年も一人で過ごすんだと思ってたのに。敦賀さんと一緒・・・。
 どうしよう・・・・・・嬉しい。すごく。

「どこ、行くのかな・・聞くの忘れちゃった・・けど、あったかい格好してったほうがいいよね。
 あったかい飲み物も持っていったほうがいいかも!」  

 どことなくうきうきした気分になって、私は夜が深まるのを待った。


12月31日 9:10pm


「敦賀さんは 年末年始っていつもどう過ごされてるんですか?」
 
 人通りがぐっと少なくなった大晦日の東京を走り抜ける。きっとみんな故郷に帰ってるんだろうな・・。
 そんなことをぼんやり思いながら、私はハンドルを握る敦賀さんに話しかけた。 

「うーん・・仕事ないときは 家でのんびり・・かな。モデル仲間が日本に来る時なんかは
 一緒にすごしたりしてたけど」
「・・そうなんですか」


・・・敦賀さんも、家族の元には帰らないのかな・・・聞いちゃいけないような気がして、私は黙った。

いつもはほとんど家にいなかったあの人・・・母親も年末年始だけは家にいて・・・
特に何をしたってわけじゃないけど・・・
それでも一緒にいてくれるだけで嬉しかったのよね・・子供のころは。

「・・どうした?」
「え・・?」
「なんかつらそうな顔してたから」

 ミラーに映った私の顔を見られていたみたい。鋭いな・・この人。

「いえ、ちょっと昔のこと・・母のことを思い出して・・」
「・・・こっちに来てから実家には帰ってないんだろう?」
「そうですね・・・まああの人は私が帰ったところで何とも思わないでしょうし・・ 今はいいんです。」
「今は・・か。」

それきり、敦賀さんは深くを聞いてはこなくて。
車の中を ラジオの音だけが流れていた。



車が第三京浜に入って、しばらくたった頃。

「最上さん、窓の外、見てごらん」

しばらくの沈黙を破ったのは敦賀さん。

「え・・?」ふとガラスの向こうを見ると街の灯りが広がっていた。
「すごい夜景! きれいですね・・・・宝石みたい。」

「・・・・いつか帰れる日が来るといいね・・君も」
「・・・そうですね・・」
 来るのかな、そんな日が本当に。
「敦賀さん・・・」
「ん?」
「いえ・・楽しみです!横浜、初めてなんで」
 
今日、どうして誘って下さったんですか?そう訊こうとしたけど、やっぱり訊けなかった。



12月31日 11:00pm

鮮やかなイルミネーションの大きな観覧車を向こう岸に眺めながらはしゃぐ人たちのグループ。
そんなに人も多くはないし、帽子を目深にかぶってはいるけど・・敦賀さん気づかれたりしないかしら。

「大丈夫だよ、こういうときって案外周りの人の顔なんて見てないし」
「そういうもんですか?」
「そういうもんです。」
「11時か・・まだちょっと時間あるなあ・・・寒くない?なんかあったかいもの買ってこようか?」
「あ、ちょっと待ってください」

 鞄から魔法瓶を取り出して、敦賀さんに見せた。

「あの、これ、作ってきたんです!コーヒー・・」
「ああ、ありがとう。」


「・・うん美味しいね」
一口飲んで、敦賀さんが笑みを浮かべる。
私には少し苦い、ブラックコーヒー。

敦賀さんの笑顔をコーヒーの湯気が包んで。
冷たい冬の空気が、その場だけいっぺんに温かくなるみたい。

私の胸の奥がぐっとあったかくなったのは、きっと少し苦いコーヒーのせい。

「今年ももう終わりか・・・早いもんだね」
「そうですね・・・・敦賀さん、私と初めて会った時のこと、覚えてます?」
「え・・・・・?」
「『この業界、根性だけでうまくいくと思うなよ』ですよ?初対面で!!
 ・・あの頃はほんと私、敦賀さんて怖い人なんだとばっかり思ってました」
「そ、そうだったっけ・・・・・悪かったよ、怖がらせて」

2月に会ったときは、ものすごい形相で追い返されて。
それから少しずつ敦賀さんの人柄がわかってきて、お互いの誤解も溶けて。
気が付いたらこんな風に大晦日を一緒にすごしているなんて、本当に不思議。

「ふふっ。もう今は優しい人だってちゃんとわかってますけどね!」
まあ、たまにもんのすごくコワいけど・・・・。

「まあ、俺は基本紳士ですから」
「・・・嘘ツキ」
「・・・・何か言った?」
「いえ。別に・・・」

それから、この一年の出来事を振り返りながら、敦賀さんとの時間を過ごした。

初めてとったCMのこと、代マネの時のこと、ダークムーンのこと、軽井沢・・。
こんなに共通の話題があるくらい 気が付いたら一緒に過ごしてきたんだな私。敦賀さんと・・。



「一緒にいられて、すごくうれしいんです」

 口に出そうとするときゅうっと胸が苦しくなる。

・・・なんだろうこの気持ち。いけない!ものすごくいけない気がする!


「つっ、敦賀さん!あの観覧車、乗ってみませんか?」


 思わず大きな声で叫んでしまった。ななめ前にいたカップルがちらりと私たちの方に視線を向ける。
「・・ねえ、さっきから敦賀さん敦賀さんって声聞こえんだけど・・
 もしかして敦賀蓮じゃないよね・・?背ぇ高いしさなんか、雰囲気それっぽいっていうか・・」
「え?まさかー。いないよこんなとこに」
「そーかなあ・・声似てんだけどな・・」

カップルが前をむきなおした瞬間に、私たちはその場を離れた。
・・やばいやばい。あやうく気づかれるところだったわ。

「・・・すみません私・・・」
「いや、いいっていいって。でも大きな声出すと目立つから気をつけないと・・」

「あの、私頭冷やしに行ってきます!!」
「え?ちょっ、最上さん、どこ行・・・わっ」
「きゃっ・・」

その場を駆け出そうとした瞬間、私は芝生に足をとられてしまって。
体が斜めになった瞬間、敦賀さんの腕が私を支えて。そのまま二人重なるように、芝生に倒れこんだ。

「って・・」
「・・!敦賀さん、大丈夫ですか!?」

がばっと顔を起こすと、私の下に敦賀さんが・・

「俺は大丈夫・・・もう、だめだよ最上さん、急に走り出したら。
 しっかりしてるわりに案外そそっかしいんだから。君は・・」
「うっ・・すみません・・・前にもこんなことありましたね・・」

そう、前にも・・・あ。 ダークムーンごっこの時だ。
思いだしたら急に恥ずかしくなってしまった。顔・・・赤くなってるような気がする。
敦賀さんに気づかれる前に、離れなきゃ。

「あの・・・敦賀さん、そろそろ腕を・・」

離してください、そう言おうとしたその時。

3、2、1・・・
ワーっ!!
湧きあがった歓声につられて見上げると、観覧車の時計は、0:00。


1月1日 0:00am


HAPPY NEW YEAR!! あけましておめでとー!!
飛び交う新年を祝う声。遠くクラッカーの音まで聞こえてる。

「・・あけましておめでとう。」
「・・おめでとうございます。」
「今年もよろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!!」

 お互いに顔を見合わせたら、なぜかおかしくなって、二人で同時に笑った。
 敦賀さんが私に向かって伸ばしたその手をとり、彼の体を起こした。

「年、明けちゃったね」
「カウントダウンは、また今年やりましょう!・・仕事じゃなかったらですけど」
「うん・・」
 クスッと敦賀さんが笑った。

「敦賀さん今日、誘って下さってありがとうございます。今日一人でいたら多分落ち込んでたと思う。
 敦賀さんが一緒にいてくださってよかったです・・・」

「・・・最上さん・・・・・・」
 あれ・・敦賀さん無表情? 何かいけないこといったかな私・・

「・・・・・そろそろ行こうか・・」
 敦賀さんは私から顔を背けてそのまま、足早にその場から離れた。

「え。ちょっと敦賀さん、どうしたんですかああああああ?
 まだ年明けたばっかりですよおお敦賀さん~~!!待ってください~」

 敦賀さんの足がぴたりと止まって、振り向いた。

「観覧車。」
「え?」
「乗りに行こう観覧車。乗りたいんだろ?ただし、並んでる間は、俺の名前を連呼しないこと」
「え、それは嬉しいですけどでも・・あの、なんて呼べば・・」
「そーだなあ・・「れ・ん」とか??」
「!!!!無理です!!敦賀さん、いぢめっこの顔になってますけど!」
「嘘。行こう。」

敦賀さんがいたずらっこの笑顔で私に手を差し出すので、私もその手をとって歩きだす。

「・・今年はいい年になるといいですね・・」
「なるよ、きっと。」
 

今日触れるの、二回目だ・・・そんなことを考えているのを敦賀さんはきっと知らない。


一歩ずつ一歩ずつ 着実に この男に引き寄せられてる自分を 私は止められるだろうか。



fin


あとがき

・・読み返すとやっぱり糖度高いよなあ・・・うおおお恥ずかしっ。
12月31日にUPしていただいたこのSS。
郷里を離れたキョーコは年末年始どうするのかなーとふと思ったのがこれを書いたきっかけです。

というのもじろも上京してもうすぐまるっと12年になりますが、
…実は年末年始に地元に帰ったことがありません。
とはいってもそれ以外の時はたまに帰ってるんですけどね。仕事のついでに帰ったり。

今は飛行機代がばかばかしいという理由のほうが大きいんで
帰らない友人らとともに近場に旅行したりお互いの家ですごすという感じなんですが。
2年くらい帰ってないんで今年くらいさすがに帰ろうかとも思ったけど休みが短かったので断念。
てか国内帰るより海外旅行のが安いというのもなあ。どうなんだ。

横浜でカウントダウン。実はじろ学生時代によくやってたんですよ。
オイラの場合は男女おりまぜてわいわいって感じでロマンのかけらもありませんでしたけどね。

ひそかに続篇?構想中・・・。

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